質の良い睡眠のための、毎日の簡単な5つの習慣
質の良い睡眠のために、心がけていることはございますか?
毎日の習慣に少し気を配ると、睡眠の質は変化します。ここでは、質の良い睡眠のための、毎日の簡単な習慣を、お伝えします。
質の良い睡眠のための、毎日の5つの習慣
質の良い睡眠のためには、下記の、5つを習慣にするようにしましょう。朝の習慣3つ、と、夜の習慣2つです。とても簡単でシンプルなことに驚くかもしれません。でも、効果があります。
朝の習慣 3つ
1.起床時刻を一定にする。
2.起床後、太陽の光を浴びる、もしくは、光目覚ましなどの、強い光を浴びる。
3.タンパク質(トリプトファン)を含む、肉や魚、大豆製品、卵、乳製品を献立にした朝食をとる。
夜の習慣 2つ
4.日没後は、部屋の照明を、やや暗めで暖色の間接照明にする。
5.深夜はメディア制限を心掛ける。
たった、この5つです。この簡単な5つの習慣が、質の良い睡眠のために、大いに役立ちます。
この5つの習慣は、睡眠にトラブルを抱えてらっしゃる方を診察される医師の方々も、まず最初に、徹底を促す習慣でもあります。
理由は、理想的な睡眠のパターンを構築するために必要な、ヒトの生体リズムの調整が、上記の5つの行動を習慣にすることで、理想的に実現されるからなのです。
良質な睡眠と概日リズムの関係
ここからは、上記の習慣が、なぜ大切なのかの理由をお伝えしていきます。
理由は、上記の5つのことを習慣化することで、ヒトが、本来持ちあわせている、自然に睡眠し、目覚める、という流れが正常に行われるようになるからなのです。
ヒトの体にはリズムがあり、一日の時の流れに合わせて、眠ったり、目覚めたり、活動したりといったことが自然に行われます。この、ヒトの体の一日の流れ、リズムを、概日リズムといいます。
この、概日リズムが正しく整い、一日の生体リズムが、スムースに行われることが、質の良い睡眠のために、必要なことになるのです。
概日リズムとは
ここからは、概日リズムについて、詳しくお伝えしていきます。
概日リズムとは、ヒトの一日周期の生体リズムのことです。サーカディアンリズムとも呼ばれています。
概日リズムは、24時間より長いことが特徴です。人間生活の1日、24時間より、長いということです。そのため、概日リズム、ヒトの一日の生体リズム周期と、人間生活の24時間の周期の、誤差を、毎日解消していくことが必要になります。
誤差を解消するタイミングは、毎朝、定時に朝日を浴びることで、行われます。朝日を浴びることで、概日リズムは、毎朝、リセットされ、人間生活の24時間と周期が合うように流れていくのです。
具体的な、リセットされるしくみをお伝えします。睡眠中、ヒトの深部体温は、目覚めに向かうタイミングで、最低値になります。深部体温が、最低値になった後、目覚めに向かうタイミングに、朝日や強い光、を浴びることで、概日リズムの周期は短くなります。概日リズムは、24時間より長いので、朝日を浴びることで、リズムが短くなり、24時間に調整される、というしくみです。
5つの習慣が睡眠の質に大切な理由
ここからは、5つの習慣が大切な理由を、それぞれお伝えしていきます。5つの習慣、すべて、概日リズムに関連しています。
1.起床時刻を一定にする。が大切な理由
起床時刻を一定にすることが、質の良い睡眠につながる理由は、生体におけるリズム現象にあります。リズム現象の中でも、人間の概日リズムと、概日リズムの同調因子が大いに関係しています。
詳しく解説していきます。
実は、人間の体の一日のリズムの周期、概日リズム、は、24時間より長いことが判明されています。人間社会の、1日は、24時間です。生活するうえで、体のリズムと、社会の一日24時間のリズムに、誤差が生じるのです。
その一日のリズムの誤差をリセットするために、毎朝、定時に起きることが大切になります。
では、なぜ、毎朝定時に起きると、リズムの誤差がリセットされるのでしょう。
このしくみを、解説するには、ヒトの眠りのプロセスの中の、体温の変化をお伝えする必要があります。
人は、体温の下降に伴い、入眠し、体温が一日で一番低くなった後、体温の上昇期に起床します。ここでいう体温とは、深部体温という、直腸の温度のことを指します。
ここで、リズムのリセットの話に戻ります。
概日リズムのリセットは、一日の体温が一番低くなった後、上昇期に、光を浴びることで、24時間の周期にリセットされます。
毎朝、定時に起きることで、概日リズムのリセットが一定に行われるのです。
もし、休日に、起床時間を遅くすると、どうなるでしょう。概日リズムが、後ろにずれ、体内時計がずれてしまいます。
概日リズムが後ろにずれ、体内時計にずれが生じると、
- 日中の眠気が強くなる
- 寝つきがお遅くなる
- 平日いつもの時間に起きようとしても眠気が強くなる
という悪循環が生じてしまうのです。
このずれが修復され、快適に起きれるようになるまでに2~3日かかるとされています。休日、1度、朝起きる時間を遅くするだけで、週の半分に、悪影響を与えるということです。
そのため、快適な質の良い睡眠のためには、毎朝、定時に起床することが大切になるのです。
2.起床後、太陽の光を浴びる、もしくは、光目覚ましなどの、強い光を浴びる。が大切な理由
強い光を浴びることが大切な理由は、朝、目覚めとともに、光を浴びることで、概日リズム、脳の中枢の体内時計が24時間周期にリセットされるからです。
概日リズム、体内時計を24時間にリセットすることで、
- 朝は、覚醒モードに入り、
- 夜の眠りが自然に訪れ
一日の生活がスムースになります。
光を浴びるタイミングも、大切です。
概日リズムのリセットが、正常に行われるには、体温(深部体温)が一日の最低温度になり、上昇期に、光を浴びることで実現されます。体温(深部体温)が一日の最低温度になるのは、夜明け前、目覚めに向かうタイミングです。
光を浴びるタイミングが、体温(深部体温)が、最低温度になる前に、浴びてしまうと、概日リズムが延びるとされています。概日リズムは、24時間より長いにもかかわらず、さらに、長くなってしまいます。すると、人間生活の24時間周期とのずれが、さらに大きくなります。ヒトの一日の生体リズム、概日リズムが、24時間より遅くなりますので、目覚めが遅くなり、夜の寝入りも遅くなる、という悪循環になってしまうのです。
3.タンパク質(トリプトファン)を含む、肉や魚、大豆製品、卵、乳製品を献立にした朝食をとる。
タンパク質の、トリプトファンを多く含んだ朝食をとることも、質の良い睡眠のために大切です。理由は、トリプトファン、を朝に摂取することで、睡眠に必要な、ホルモンに良い影響を与えるからです。
詳しく見てみていきましょう。
睡眠に関連する主なホルモンは、セロトニンとメラトニンです。
- セロトニンは、日中光を浴びることで生成され、ヒトを活動的にします。
- メラトニンは、朝、光を浴びてから、14~16時間程度経過し、暗くなると、松果体内で、セロトニンからメラトニンが合成され、体を鎮静化させ、睡眠に導きます。
上記で、セロトニンとメラトニンに、つながりがあり、働きが連携されて、睡眠に作用してくことがわかったかと思います。
この連携の前にくるのが、必須アミノ酸(タンパク質)のトリプトファンです。
トリプトファンは、必須アミノ酸(タンパク質)です。トリプトファンを摂取し、太陽光を浴びることで、セロトニンが合成されます。
流れが見えてきましたね。
朝食で、必須アミノ酸(タンパク質)のトリプトファンは、太陽光を浴びることでセロトニンが合成されます。
- セロトニンは、朝日を浴びた14~16時間後、暗くなると、松果体内で、メラトニンを合成します。
- メラトニンは、体を鎮静化させ、睡眠を促します。
朝食に、トリプトファンを含んだ食品をとることで、夜の睡眠の質に作用する流れが判明していただけるでしょう。
ここで、トリプトファンを含む、朝食に取りたい食品を上げておきましょう。
- 魚類・魚類加工品:かつお・まぐろ・鮭・さば・あじ・さんま・煮干し・かつお節 など
- 肉類:牛肉(特に赤身)、豚肉、鶏肉、ハム・ソーセージ など
- 乳製品:牛乳・チーズ・ヨーグルト
- その他:大豆製品・ナッツ類・ごま・卵・春菊・ほうれん草・食パン・白米・アボカド・バナナ など
トリプトファンを含む食材は、朝食として、昔からなじみのある、揃えやすい素材です。
- 和朝食なら、ご飯とお味噌汁、焼き魚。
- 洋朝食なら、ハム、ヨーグルト、牛乳、トースト。
特別な素材を使った朝食でなくても大丈夫です。
朝、時間の余裕をもって起床し、食事の時間を確保するようにしましょう。簡単なこのステップが、夜の睡眠に良い作用となります。
夜の習慣
4.日没後は、部屋の照明を、やや暗めで暖色の間接照明にする
ここからは、夜の習慣です。夕方以降は、部屋の照明を暖色系の暗めにするようにしましょう。
理由は、先述の、睡眠に必要なホルモン、メラトニンの分泌によります。
メラトニンは、朝日を浴びた14~16時間後、暗くなると分泌され、睡眠に導きます。ところが、メラトニンは、明るい光や、ブルーライトによって、分泌が抑制されてしまうのです。
夜間であっても、光によって、メラトニンの分泌が抑制されてしまい、睡眠に導く作用が影響を受け、寝付けない状態を引き起こします。
自然に、眠くなり、質の良い睡眠をとるためには、日没後、暗めの暖色系の照明にすることが大切になるのです。
5.深夜はメディア制限を心掛ける。
最後は、睡眠前は、メディアの利用を控えることが、大切な理由です。
メディア、テレビ視聴や、パソコン操作、携帯電話、スマホの利用は、大脳を活性化させるとされています。大脳が活性化されると、眠りに入りづらくなったり、途中で目覚めやすくなってしまいます。
自然に入眠し、途中で目覚めることなく、質の良い睡眠をとるには、大脳を活発にしてしまう、深夜、眠る2~3時間前は、メディアの利用を抑えることが大切になるのです。
以上が、質の良い睡眠をとるための、5つの習慣が、大切な理由です。
上記の理由を見ると、ヒトの仕組みが、よくできていると感じるとともに、良い睡眠で日常元気に過ごすために、人間が工夫を重ねてきたことにも、素晴らしさを感じます。
現在は、時代が変化し、生活スタイルが大きく変わり、睡眠にしわ寄せがき始めている時代なのかもしれません。
質の良い睡眠のためにできる、5つの習慣は、簡単で、シンプルながら、効果の高さがあります。
使えるテクノロジーは、大いに活用しながら、5つの習慣で、質の良い睡眠を確保し、健やかな毎日を送っていただけますこと、心より願っております。
脚注
文献
堀忠雄、白川修一郎、(2008)『基礎講座 睡眠改善学』一般財団法人日本睡眠改善協議会.
宮崎総一郎、林光緒、(2017) 『睡眠と健康』一般財団法人放送大学養育振興会.
宮崎総一郎, 佐藤尚武、(2013) 『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』株式会社全日本病院出版会.
この記事を書いた人
田中宣子
シーツjp店長。上級睡眠健康指導士(認定登録番号 第662号)。
専門分野の、快眠のための寝具の販売、及び、ご相談、ホームファニシング、インテリア販売に、1994年から従事。1923年創業の弊社の店舗にて、対面で23年間、お客さまにぐっすり眠れるための寝具のコンサルティング、ご提案、販売を担当。その経験を活かし、現在は、オンラインにて気持ちよく眠っていただくための、ベッド用寝具の販売、ご提案、ご相談に注力。
前職は、米国の航空会社のマーケティング部アジア統括スーパーバイザー。お客さまが快適で安全な空の旅を楽しんでいただくための仕事に従事。
たずさわるすべての方々とそのご家族が、ぐっすりと気持ち良く眠り、心地良く目覚め、活力いっぱいに、毎日をお幸せにお過ごしいただけるよう、仕事をしています。
ぐっすり気持ちよく眠るための寝具のご相談は、お気軽にお寄せください。